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■【2】 「TOYRUN」はまだ続いているんですよ ■ 
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――「Moto-Com」の中山さんと言えば「TOYRUN」の主催者、そういうイメージ
で見ている人も多いと思います。中山さんがなぜ「TOYRUN」を中止にしたのか、
そして「TOYRUN」は形を変え、今も行われていることをお話いただければと
思います。まず「TOYRUN」についてお伺いしてもよろしいでしょうか。――

「TOYRUN」は「Moto-Com」のお客さんを中心に集まった「Dead Cats」という
メンバークラブが主催していたチャリティーミーティングです。最初は仲間
内のキャンプからのスタートだったのですが、年々参加者が増え、問題も
増えてきたので、1998年でひとまず中止ということになりました。

――そもそも「TOYRUN」が始まったきっかけは何なのでしょうか。――

僕が仲間と初めて行ったミーティングが「場所は用意するから、後は皆さんで
交友を深めてください」というミーティングで。それはそれでいいんですが、
休みをとって遠くから来ている人にとって「これだけなの?他にイベントは
やらないの?」と感じるミーティングでした。せっかく多くの人が集まるん
だから、もっといろいろな企画があってもいいだろう、そう思いました。
「だったら遠くから来た人にも満足してもらえる、イベントのあるミーティング
を自分たちでやろう」。ということで、「Dead Cats」のメンバーや仲のいい
他のクラブの人にも声をかけて、ミーティングの準備をはじめたんです。

――ミーティング開催にあたって苦労されたことはありましたか? ――

場所の確保、これが一番大変でした。最初はキャンプ場を借り、スクリーンを
用意して、寝転がりながらみんなで「イージーライダー」を見よう、という
企画だったんですが「たくさんのバイクが集まるイベントには場所は貸せない」
とことごとく断られまして。当時はまだ「バイク=暴走族」というイメージが
強かったんです。「バイク乗りの市民権ってこんなに低いんだな」とショックを
受けました。そういうイメージを払拭したくて、「バイク乗りのイメージを
よくできるような活動もしよう」と、バイク乗りが各自オモチャを持ち寄って
寄付する「TOYRUN」のアイデアをスタッフと話しあって決めました。

――「TOYRUN」の「TOY」はそこからきているわけですね。「TOYRUN」の趣旨は
恵まれない子供にオモチャを寄付しようということでよろしいでしょうか。 ――

何をもって「恵まれない」とするか、は難しいのですが・・・当初は「恵まれ
ない子供たちにオモチャを!」だったんです。最初は本当に玩具だけを集めて
いたのですが、回を重ねてくると、施設によって必要なものが違う事が分って
きました。最近は何が必要なのか先に聞いてから「今年は文房具を」という
ように集めています。ただ、海外に目を向けると「オモチャより必要なものが
ある」、「せっかくこの世に生を享けたのに5歳まで生きていけない」そういう
子供たちが沢山います。今後はそういう海外の子供たちにも何かしてあげられ
ないのか?という事で、次の段階のことを考えています。

――そういった趣旨のミーティングに最終的には1000台以上のバイク乗りが
集まった、スゴイことですね。――

確かにそうなのですが、問題も出てきたんです。「TOYRUN」の趣旨をよく理解
していない人も出始めたんですね。大部分の人は「TOYRUN」を理解して共感して
くださっていましたが、一部にマナーの悪い人が出てきて、パーツの盗難や
酔っ払って暴れる人が出たり、ステージに乱入するような人が出たりと大変な
状況になりまして「このままだと今後もっと大きなトラブルが起こるな」と
思い、中止という判断をしました。

――長年続けてきたミーティングを中止するのは勇気がいったのではない
でしょうか? ――

規模が大きくなってくると、私たちスタッフも来てくれた人と話す余裕もなく、
「TOYRUN」の意義を伝えきれていなかったんですね。「TOYRUN」は「オモチャ
をもってくればパーティーに参加できる」イベントではなく、「恵まれない
子供たちに夢を」という想いを理解して来て欲しかった。ただ、あれ以上の
規模になるともう、最初の想いからずれてしまうと思い、残念でしたがオー
プンなミーティングとしての「TOYRUN」の中止を決めました。でも「TOYRUN」
の活動は今も続いています。実はミーティングも事前登録制という形でやって
いますし、ミーティングに来られない方でも「Moto-Com」にオモチャを送って
いただいた方には「TOYRUN」のワッペンをお送りしています。「TOYRUN」の
本当の趣旨を理解していただけている方の中では「TOYRUN」はまだ続いて いるんですよ。

――事前登録制とはどのような形でしょうか。――

前年に来てくれた方だけに告知をお送りして、参加者を募って開催しています。
告知をお送りした方が責任を持って連れてこられる方は参加していただいても
かまいませんし、新しく参加されたいという方は「説明書を送ってください」と
ご連絡をいただければ、ミーティングの趣旨やルールを書いたものをお送りして
います。それを確認した上で申し込みをしていただき、ミーティングに参加して
もらう、そういう形で運営しています。「うるさいことをいうミーティングだな」
と思われるかもしれませんが、来てくれる人が安心して楽しめる場にするために、
こういう形での開催になっているのはご理解いただきたいですね。来場者を増やす
だけのミーティングはもう終わり、これからは質の高いミーティングを目指して
います。来場者はなかなか増えないですが、今は盗難などもなく「TOYRUN」が
はじまった当初のように平和ですよ。今は私たちも余裕をもって、自分たちの
想いを伝えることもできています。1986年からはじまった「TOYRUN」ですが、
18年かけて、やっと思い描いた「TOYRUN」になりつつあります。バイク乗りで
あるか無いかは関係なく、「他人に対する思いやり」や「優しさ」を持てる方で
あれば、是非ご協力ください。



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